ニコチン
ニコチンの害
タバコの煙の中に含まれるニコチンは、精神的、肉体的な依存を引きおこす原因物質として有名です。
ですがタールと比べて、その毒性の強さはあまり知られていません。ここではニコチンの様々な害について見ていきます。
1.青酸に匹敵する毒性
ニコチンは青酸に匹敵する強力な毒物です。かつてニコチンは殺鼠剤やゴキブリ駆除剤として使われていました。
初めてタバコを吸ったときに、咳き込んだり、くらくらした経験はありませんか?
禁煙補助パッチを吸ってタバコを吸ったり、禁煙してしばらく経ってからタバコを吸っても、気持ち悪くなることがあります。
これは体内のニコチン濃度が高くなったために引きおこされるニコチンの急性中毒症状なのです。
2.精神的・肉体的な依存
ニコチンによって作り替えられる脳
ニコチンの毒が与える影響が、肉体以上に深刻なのが精神面、脳に対する影響です。
肺から取り込まれたニコチンは数秒で全身をかけめぐり、脳内にある快楽を感じる部分に作用します。
人間は本来タバコなしでも、普通に集中することが出来ます。しかし一度ニコチンに慣れてしまうと、脳は強力な刺激物であるニコチン専用に作り替えられます。
そのため喫煙者はニコチンが血液中にないとイライラし、脳からの「ニコチンを摂取せよ」という命令にとらわれるようになるのです。
ニコチン依存症を再発させる一本のタバコ
喫煙者が長い精神的、身体的依存に陥る理由は、ニコチンによって脳が作り替えられたからです。
たとえ禁煙に成功したとしても、油断はできません。なぜなら喫煙者の脳は作り替えられたままだからです。
タバコを1本吸えば、脳の受容体は再び活性化します。その結果、喫煙者は再びニコチン依存症に戻っていってしまうのです。
タバコを1本吸い終わる頃にはニコチンは消えて無くなってしまいますが、ニコチンが脳に及ぼした悪影響は生涯消えません。
その他のニコチンの害
純粋な毒としての害、中毒症状以外にもニコチンは様々な悪影響を身体に及ぼします。
①心臓や血管へのダメージ
ニコチンは血管を収縮させて血行を阻害します。タバコを吸うと皮膚の体温が下がるように、ニコチンは喫煙者の心臓と血管だけでなく、末端の細胞にまで害を及ぼします。
血管の縮小により、心臓や血管がダメージを受けます。タバコを吸うと喫煙後数秒で心拍数と血圧が上昇。末梢血管の血流が減少し、体温が低下します。その結果、身体全体の新陳代謝が阻害されるのです。
②生理不順やお肌へのダメージ
ニコチンは弾力性のあるみずみずしい肌を作りだす女性ホルモンの分泌を低下させます。 さらに血行の阻害によって新陳代謝が悪くなるため、冷え性や生理痛、肩こりを引きおこします。ニコチンは肌のくすみ、しわ、しみ、吹き出物の原因なのです。
③妊娠、出産、赤ちゃんへの悪影響
ニコチンは水溶性なので血液を通して赤ちゃんにも悪影響を与えます。妊娠時の喫煙は絶対に避けて下さい。
出産後も母乳に含まれるニコチンが赤ちゃんに悪影響を与え続けます。体内にコチニンを多く含んでいる女性から生まれた赤ん坊は、成長が遅い傾向にあります。
④動脈硬化を引きおこす。
ニコチンは血液中のコレステロールを酸化させ、せっかくの善玉コレステロールを悪玉コレステロールにしてしまいます。更にニコチンは副腎を刺激して、カイコールアミンというホルモンの分泌を促し、血液を固まりやすくさせてしまうのです。
その結果、血液がドロドロになり、動脈硬化が引きおこされます。ある研究ではタバコを吸っている人が動脈硬化に陥る危険性は非喫煙者の5倍以上となっています。
⑤腎臓病を引きおこす。
ニコチンは純粋な毒ですから、身体は一刻も早くニコチンを無害化し、体外に排出しようとします。この時、解毒を担当する腎臓には凄まじい負担がかかります。腎臓病が進行すると、腎不全につながります。ですから透析をしている患者さんはタバコを吸っている人がほとんどいないのです。
ニコチンの毒は即効性で長く効く!
ニコチンの毒は即効性です。そのためニコチンが入ってすぐに、腎臓はニコチンをより毒性の低いコチニンに変えようとします。コチニンは3日ほどで外に出されてしまいますが、全てのニコチンを腎臓がコチニンに変えられるわけではありません。コチニンに変化するのはニコチン全体の80%ほど。
腎臓は全力でも8割しかニコチンを無害化できません。
腎臓に疾患が無くてもニコチンの毒の20%以上が体内に留まり続けるのです。体内からニコチンが抜けきるのに数週間かかるのはこのためです。
その他にも20歳未満の喫煙は将来的に骨粗鬆症になるリスクを高めます。
ニコチンは身体の成長や発達を阻害しますから、未成年者のニコチンの摂取は絶対に避けてください。